脈絡のない料理 vol.9
七転び八起き
2023年4月8日 〜 4月13日
会場 hijirinosubako.(北九州市小倉)
人生って脈絡のない出来事の
連続だと思うんです
それが何であるかは
実はそんなに重要なことではなくて
その繰り返しや重なりが必要だから
僕らは延々と脈絡のないことを
繰り返すのです
neutral 北嶋竜樹
01 七転び八起き
物事には他者には見えない領域ってものがあって
緩やかに見える景色にだってそう
その内側にはルサンチマンを抱いたような感情が
ぐるぐると渦巻いているものなのだ
痛みを堪えて静かに時を待っている
ゆっくりと身体が浄化されていくのを
果てしない道のりを想像したら
頭がくらくらするのだけど
柔らかいヴェールに包まれた夜は
表出した僕の憎悪や嫉妬を
うまく隠してくれた
いいじゃない、それくらい
きっとそんな夜もあるわよ
そう言って君は部屋から出て行った
あの夜ぼくは死んだ
音も立てずにそっと
白磁小鉢:黒田泰蔵
02 ゆめのはなし
「ぼくはポジティブ思考なんて大っ嫌い!
胡散臭い言葉に塗れて感情に蓋をするくらいなら
よっぽど嘘をついて逃げた方がマシだね!」
あれは何年前かしら
わたしが何と気なしに発した言葉に
どうしてかあなたは酷く噛みついたの
きっと疲れていたんだわ
世の中の有りと有らゆることに
あの時わたしは咄嗟に反論したし
その後しばらく怪訝な態度だったかしれない
だけど今なら少しはわかるわ
あの時のあなたは全てが正しかったし
全てが間違っていたってことも
どうしてかしら
嫌いじゃないの今でもあなたのこと
とっても深い部分では似ているのかも
しれないと思うからかしら
でも勘違いしないでよね
決して好きでもないわ
そういうものでしょ?
人生って
錫白釉デルフトタイル:オランダ17世紀
03 仲良しな二人、或いは穏やかな日常。
ねぇねぇ、好きと好きのあいだって
そんなことあると思う?
”あるんじゃない?わかんないけど”
ちょっと、いいかげんに答えないでよ
こっちは真剣に聞いてるの!
”そうなの?じゃぁ、ないんじゃないかな?”
そう言ってぼくはクスッと笑ってみせた
君はとっても怒っていた
焼き締め中鉢:二階堂明弘
04 君やぼくの大切なもの
触れられたくないけど
ほんとは触れてほしいの
痛いのはやだから
優しくしてね
とっても怖いわ
今だって震えてるもの
だけど迷いはないの
これだって決めたら
わたし強いんだから
フランスアンティーク扇形皿:18世紀
05 ダイバーシティ
ほんとはね
分けれっこないの
ぼくも、君も、あなただって
みんな分けたがるけどね
いろんなものが綯い交ぜになって
世界はいつだって可もなければ不可もない
ぼくにとっての違和感や不快感は
だれかにとっての快感かもしれないわけだから
寛容さをもってそこにある
ただそれだけのことなのかもしれない
願わくば、その思いだけを分かち合えたら
それくらいがちょうどいいのかもね
黄瀬戸石皿 :江戸時代後期 栗木坪杓子:大正時代
古常滑山茶碗:平安時代 土器壺:杉謙太郎
06 おわりの儀式は、はじまりの合図。
人生は遠回りって言うじゃない
いろんな無駄なことたくさんあったけど
振り返ってみるとさ
そんなに悪いもんじゃないぜ
なんていうか
そっちの方が滋味深いと思わない?
白磁小鉢 :黒田泰蔵
Photo by az.you.more